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Vol. 01 森田 省司シェフ 南アフリカ共和国(ヨハネスブルグ) 
サッカーワールドカップ開催地=南アフリカ共和国で和を広める!
現在、南アフリカ共和国(ヨハネスブルグ)の日本食レストランにて料理長を務める森田省司シェフです。
Chef's Profile
Vol. 03 森田省司シェフ 名 前 森田 省司 (もりた しょうじ)
海外勤務 カナダ(バンクーバー)⇒南アフリカ共和国(ヨハネスブルグ)⇒
ギリシャ(テッサロ二キ)⇒ハンガリー(ブダベスト)⇒
ロシア(サンクトペテルブルグ)⇒南アフリカ共和国(ヨハネスブルグ)
経  験 寿司、河豚、調理師学校講師
Q ワールドカップ開催前ということもありますので、まずは南アフリカ共和国(以下、南ア)に関してですが、森田シェフは南アで仕事をするのは2度目のようですね?
そうなんです。実は、私は日本人としてはかなり珍しいと思いますが、南アの永住権を所持しています。そのため、ビザの心配もいらず、私にとっては来やすい国の一つです。今回は、もうすぐサッカーワールドカップが開催されますので、ワールドカップが終わるまでの4ヶ月だけの契約です。
Q ああそうですか。南アの永住権をお持ちなのですね。最近は、ワールドカップもありますので、日本でも南アに関する報道はかなりされていますが、「危険」「危ない」といった報道を目にします。その辺はいかがですか?
まあ、報道の通りですね。治安は、はっきり申し上げてよくありません。そのため、2度目の滞在とは言っても「夜は出歩かない」「車の中には何も置かない」といったようなことは気をつけています。ヤバイ場所はわかっていますので、そのようなところには当然近寄りません。あとは夜中に車に乗るとき、赤信号は無視して止まらずにゆっくり通過しますね。
Q 治安面はやはりそうなのですね。赤信号を無視するというのは、止まっている間に襲撃されるなんてことがあったりするからなのでしょうね。2度目の滞在なので、その辺はだいぶ慣れていらっしゃるのだと思いますが、一度目の滞在のときは大変でしたでしょ?
1度目のときは、治安面もそうですが、給与支払いで問題が発生しました。弁護士を雇い、裁判沙汰にまでなりました。
南アに来る前に日本で契約書も受け取り、内容を確認、サインをした上でこちらに来たのですが、来て見ると実際に受け取る給与は低いし、仕事内容も違う。結果、そのレストランは1年で辞めることになったのですが、未払い給与があったため訴えることにしたのです。

ところが、私が日本でサインした契約書は、レストラン側に相当有利な内容になっており、弁護士から「南アでこんな契約書はあり得ない」と言われました。 最終的には、どんな契約書であれ、自分でサインしたということで示談になり、少しのお金(当初要求額の1/4)は払ってもらいました。ただ示談前には、やってもいないことを雇用主にでっち上げられ、不当に警察に拘束されたりもしたんですよ。(笑)

こういうのは時間の無駄ですし、知識があれば防ぐことができます。海外では自分を守るのは自分しかいませんからね。
Q それはそれは貴重な経験と言ったらいいのか・・・(笑)しかし、契約書は海外に出るときには本当に重要ですよね。
そうですね。私は、当時、契約書は同意書ぐらいにしか思っていませんでしたからね。契約書にサインするときには、内容をよく吟味し、不安なら第三者に確認してもらうぐらいのことをすべきですね。
Q さて、今のお仕事について少しお話をお聞かせください。
今の職場は、ヨハネスブルグで既に10年以上営業しているお店です。ですので、特に大きな問題もなく仕事をしています。食材の購入なども決まった業者に長くお世話になっていますので、私は調理の方に集中できます。ラーメンやうどんなどの麺や納豆などもお出ししているのですが、これはかなり前から自家製です。この辺は、見習わないといけないなあと思っています。なぜかというと、私は以前、別の国で手打ちうどん、手打ちそばを教えてきたことがあるのですが、日本の作り方そのままだとやはり難しい。今の店はフードプロセッサーやパスタマシンなどを工夫して使い、現地の料理人でも作れるようなオペレーションを構築しているからです。
Q 南アでも麺類や納豆を自家製で作っているレストランがあることは驚きです。今のお店のお客様は、ほとんどが現地の方ですよね?納豆なども食べるんですね。現地の方々に人気の秘訣や現地の方々のテイストにあった素材や味付け、調理方法等、工夫をなさっていることはありますか?
寿司の握りは、日本人向けとは違って大きさや硬さを変えています。刺身の盛り合わせなども日本人の場合はマグロを多めにしますが、外国人にはサーモンを多めにしたり、わさび以外に刻んだチリを混ぜた醤油を添えたりという工夫はしていますね。
Q 食材はそれなりに手に入るのですか?
日本の食材は少ないですが、工夫してなんとかやっています。ただ、寿司に使うマグロはケープタウンからまあまあ良いものが手に入ります。そうは言っても、もちろん日本とは比べ物にはなりませんけどね。鮮度を保つために航空便でヨハネスブルグまで送ってもらうので、コストもバカになりません。他にも航空便を使っている食材は結構あります。伊勢海老は活きたままケープタウンから、サーモンはスコットランドやイングランドから、牡蠣は現地のものもありますが、身が小さいためフランスからなのです。白身の魚、イカ、海老などは漁港に行けば良い物があるのですが、現地の魚屋の管理が良くないので、内陸のヨハネスブルグに来るまでに大部へたってしまいます。この辺は、何とかしないといけないと思っています。
Q 南アの和食料理人の技術、知識、経験等はいかがですか?
全て黒人シェフになります。日本料理に限らずだと思いますが、彼らからしてみれば、今まで食べたことがなく、これからも食べない料理を作っているのですから、レベルは最低最悪ですよ。しかし、根気強く教えていけば、作業自体はかなり上手にはなります。「味を作る」というところまで求めてはいけないのでしょうね・・・。
Q 確かに彼らからしてみれば、食べたこともなく今後も食べない料理でしょうね・・・。しかし、そんなシェフたちに囲まれ仕事をするのも大変でしょう。ローカルのシェフと一緒に働くにあたり、難しさや逆にやりがいといったものを感じるときもあるのではないですか?エピソード等はありますか?
現在私は、曜日によって寿司カウンターに立つ日とキッチン内にいる日があります。前回の南ア滞在は、結果として3年おりましたので慣れていますが、黒人シェフ10人ほどの中に日本人が一人、これは経験がない人にしたら結構大変だと思います。基本的には英語で会話をしますが、黒人シェフ同士は部族の言語(ズールーやコーザ)で話しますしね。
Q 未知の世界ですね・・・そのような環境で円滑に進めるためには、いろいろと気を遣うことも多いでしょ?
彼らをマネジメントする上で気をつけていることは、まずすぐに皆の名前を覚えることですね。挨拶のときは、こちらから名前を呼ぶようにしています。皆が私の名前を覚えるのは簡単ですが、私はホールのスタッフも含めると20名ぐらいの名前を覚えるので大変です。でも、名前を呼んで作業を指示すると圧倒的に動きが違いますね。

それから包丁の扱いですが、これは全くダメです。研ぎ方をいくら教えても上手く研げません。店の包丁がおかしな減り方をしてしまうので、彼らに任せるのは諦め、今は私がやっています。

荷物運びや掃除は全くしなくても済みます。しなくても済むというと語弊がありますね。してはいけないと言った方が正確でしょうか・・・。つまり、それしかできないスタッフがいるので、やってしまうとその人の仕事を奪ってしまうことになってしまうのです。そのため、文句はつけますが、一切やらないようにしています。

もう一つ気をつけていることは、軽く背中を押したりということもしないようにしています。これは、ちょっと押しただけでも凄く怒られたりします。「押す」ということに関しては感覚が全く違うようです。今では冗談でもしないように気をつけていますね。
Q 国が違えば、いろいろと違うものですね。大変そうではありますが、南アの良いところもたくさんあるのではないしょうか?
そうですね。まず天気は最高です。それに全てにちょっと緩い?ところ。また、大部分の黒人は、それほど英語は上手くありませんので、私でも気後れせずに英語を喋れるというところも楽ですね。
Q 物価はどうですか?
タバコが1箱約30ランド、使い捨てライター=5ランド、マクドナルドのコーヒー(小)=8ランド、ソフトクリーム=3ランド、ガソリンが1リットル=約6ランドといったところです。

(1ランド=12円前後、2010年6月現在)
Q ワールドカップが終わると南アの今回の契約も終わりますが、また次は海外ですか?
そうですね。私は、今まであまりメジャーな国とは縁がないんです。なので、これからも「えっ?それどこ?」と言われるような僻地担当でいきたいと思います。(笑)
Q 僻地担当・・・(笑)。しかし、僻地の仕事情報は収集が大変なのではないですか?どのように仕事を探しているのですか?
以前は行きたい国のガイドブックのような書籍で日本料理店を見つけ、直接手紙を書いていました。1度目に南アに来たのは、そのように探したんです。現在はもっぱらインターネットですね。
Q 今はインターネットだけではなく、FindChefもですよね?(笑)
ははー、そうでしたね。
Q しかし、ガイドブックに載っている日本料理店に手紙とはすごいですね。森田シェフの最初の海外はカナダだったと思いますが、そのときもガイドブックで手紙ですか?
いいえ。カナダに行ったのは22歳のときですが、中学生ぐらいのときから漠然と海外に出たいとは考えていて、当時は外国といえばアメリカぐらいしか知りませんでした。 

ただ、ご存知だと思いますが、ワーキングホリデーという制度があって、昔はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドぐらいしかこの制度がなかったんですよ。この3カ国で国境を陸路で越えられるのはカナダしかなかったのでカナダに行きました。その頃は、日本がバブルでカナダにもたくさんの旅行者や留学生がおり、そのお陰で日本料理店も多く、日本語新聞で簡単に仕事を見つけられたんですね。
Q 最後にこれから海外で働きたい料理人へのアドバイスをいただきたいのですが、日本を出る前にどのような経験や勉強をしておくことが海外で役立つとお考えですか?
とにかく寿司は必須と考えています。寿司はできて当然、それ以外に何ができるか?ということではないでしょうか?日本にあり海外にも豊富にあるもの、例えば小麦粉で作るうどんや餃子の皮などを作れると料理の幅が広がります。後は肉料理。豚の角煮などは、ロシアやハンガリーでも好評でしたよ。ですので、居酒屋のような場所で働いてみるのも良い経験かもしれません。

まずは、日本でしっかりとした基礎を見につけることが必要ですね。そして英語を使えるようにしておくこと。

また、海外に行ったらまずその国の人に喜んでもらえるものを作ることを心がけることも大きなポイントですね。

腕のない人に限って、日本で海外のもの、海外で日本のものを中途半端に作ろうとします。しっかりとした基礎があれば、現地のものを使っていくらでもアレンジができると思います。また、これだけ海外に日本食レストランが増えてくると日本人なのに海外で寿司を習う人も増えてきます。そういう人たちは、粘りの少ない海外の米でしか寿司を握ったことがないので、おおかた寿司が硬い。なるべく握りを柔らかくすると良いと思います。
森田シェフ、ありがとうございました。次はどこの僻地でご活躍なさるのかが楽しみです。頑張ってください。
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